ラニ、レナラ、ラダーン、セレン。
魔術が予想以上にストーリーに根を張っている。
魔女セレンの考察の前段階として、セレンの一連の動向と源流の魔術についてまとめる。その過程で、本作の異質な存在アステールについても取り上げることとなる。
そもそも魔術とは
エルデンリングではプレイヤーが魔術を使用できる。そのためには記憶スロットに使いたい魔術を設定する必要があり、魔術ごとに必要なステータスが定められている。そのステータスとは主に知力である。我々の世界で言えば、まさに学問の勉強に対応する。
プレイヤーは既に存在する魔術を勉強して使用するわけだが、勉強できる事柄には切り開いた先駆者が必ずいる。その先駆者の試みこそが探究に他ならない。
最も簡単な魔術である輝石のつぶてのテキストを見る。
輝石のつぶて
魔術学院レアルカリアの基本的な輝石魔術
杖の輝石から、魔力のつぶてを放つ
足を止めずに使用でき、連続で使用できる
魔術の探究は、皆ここから始まる
では、魔術の探究はより具体的にどういうものなのか。
セレン
輝石には、星の生命の残滓、その力が宿っているのだよ
覚えておくがいい
輝石の魔術とは、星と、その生命の探究なのだと
今や、それを忘れた魔術師もどきばかりだからな
魔術の探究は、輝石、星、星の生命がキーワードとなる。
各地の魔術師塔やレアルカリア学院には、大量の輝く石が置かれていたり、生えていたりする。
これが輝石であり、その力によるものがレアルカリアの輝石魔術である。輝石の色は魔術の色に極めて近い。輝石の研究も、探究のひとつなのだろう。魔術の名前には、輝石の名を冠するものが数多くある。
また、魔術には星の名を冠するものも多い。輝石の彗星、輝石の流星などがそうである。
魔術の学派と、源流魔術の立ち位置
レアルカリアの魔術師には学派がある。学派は教室で決まり、教室ごとに探究の対象や方法が異なる。そして、使用する魔術も異なる。プレイ中に登場する魔術師は、頭によって使う魔術が違った。輝石頭は、初歩的な探求を終えるとレアルカリアから授与されるようである。
貴人の魔術師の遺灰
かつて、魔術学院レアルカリアの門を叩き
輝石の魔術を学んだ、貴人の霊体
けれど、その才は輝石頭を被るに値せず、
ごく初歩の魔術のみを使うことができる
ここで、輝石頭のテキストを見る。
カロロスの輝石頭(一部抜粋)
最古の教室たるカロロスは
魔術師アズールをその起源とし
彗星の魔術を探求する
オリヴィニスの輝石頭(一部抜粋)
オリヴィニスの教室は
魔術師ルーサットをその起源とし
流星の魔術を探求する
カロロスの輝石頭やオリヴィニスの輝石頭をかぶっている敵がレアルカリアには普通に登場する。その起源たるアズールとルーサットは源流の魔術師とされる。
彗星アズール(一部抜粋)
源流の魔術師の一人、アズールの魔術
「伝説の魔術」のひとつ
滅びの流星(一部抜粋)
源流の魔術師の一人、ルーサットの魔術
「伝説の魔術」のひとつ
だが、源流は禁忌である。
魔術師球のタリスマン(一部抜粋)
輝石魔術には、源流という禁忌がある
アズールとルーサットは源流のせいで学院を追放された。
セレン
最初の輝石魔術師は、もう一人いる。ルーサット師だ
アズール師と同じように学院を追われ、どこかに幽閉されている
セレンの来歴と目的
作中でセレンがどういった言動をしたかを確認し、セレンの目的を探る。
セレンはレアルカリアを追放されている。
セレン
だが、師は慎重に選ぶべきだぞ
私はレアルカリアの学院を追放されている
追放の理由は、源流魔術の探究である。
ジェーレン
源流思想に耽り、数え切れぬ魔術師をその手にかけた
レアルカリアの学院史上、最悪の災厄だったのだ
だが、周囲からすれば源流は禁忌であるとはいえ、セレンにとって源流は本来の輝石魔術の在り方であることが伺える。
セレン
覚えておくがいい
輝石の魔術とは、星と、その生命の探究なのだと
今や、それを忘れた魔術師もどきばかりだからな
加えてセレンは、真摯な探求としての輝石魔術を望んでいると発言する。セレンが源流を輝石魔術の正統と見なしていると解釈するのが妥当だろう。
セレン
カーリアの王家を受け容れ、骨抜きとなった衒学ではなく
禁忌なき、真摯な探求としての輝石魔術を、私は望んでいるのだ
源流は、カーリア王家が禁忌としたようである。
カーリア王家が源流を禁忌としたことは、セレンのこのセリフに加えて、イジーの話からほぼ確実であるとわかる。ラダーンを倒した後にイジーを尋ねると、ジェーレンについての話が聞ける。
イジー
…祭りが終わり、将軍ラダーンが倒れたのなら
ようやく、ジェーレンの義理も果たされたということです
主は違えど、臣下として、彼には感服いたします
…そして、彼に思い出してもらう時がきたようです。古い約束を
星の運命は動きだし、あの女魔術師も、もはや不死ではない
ようやく、カーリアの禍根を取り除くことができます…
カーリアの禍根。セレンは魔女封じの廃墟の地下に封印されていた。どうやら、セレンはレアルカリアから追放されるどころか、本来カーリアによって消されるはずだったようである。
だが、源流とは何か。
源流の魔術とは何か
魔術師の目的とは探究である。そして、セレンによれば源流の探究は輝石魔術の正統である。その探究はどこに向かうのだろうか。
ここで私は、源流の探究の方法は作中で2種類登場したと考察する。その探究者は、セレン、アズールとルーサット、である。それぞれの探究がどこへ向かうか下に書き記す。
- アズールとルーサット:星の上位存在へ
- 塊の魔女セレン:魔術師球へ
これらを考察していく。
ところで、レアルカリア学院には場違いな敵がいた。
壺とカニである。
壺とカニ。
どちらも中身は柔らかいが、外側は硬い殻でできており、生きている。
恐らくレアルカリア学院に壺とカニがいたのは、生命と無機物の両方の性質を持つためである。
砕け散る結晶
謎多き結晶人たちの魔術
結晶の塊を生じ、前方に砕いて放つ
タメ使用で強化される
無機物でありながら、生命でもある
結晶人のあり様は、源流の理想に近しく
彼らは、魔術師たちの賓客であった
生命と無機物の両方の性質を持つことは、源流の理想に近い。
一部のカニに至っては、殻に輝石を生じている。(倒すと輝石頭が手に入る)
ちなみに、外側が硬い他の存在といえば、さざれ石のうろこを持つ古竜がいる。その古竜の末裔たる飛竜の一体、輝石竜スマラグは他の飛竜とは違い、外皮に輝石を生じているのが見える。
スマラグの輝石(一部抜粋)
魔術師喰らいのスマラグは
やがて、その輝石に蝕まれていった
魔術師を食べると輝石が生える。恐らく、輝石の生えたカニは魔術師を食べたのだろう。倒すと輝石頭が手に入るのも頷ける。
実は、壺の方が更に興味深い考察ができ、源流の真髄に迫る。だが、一旦無視する。この記事の続編でまた取り上げることになる。
話を戻すと、生命と無機物の両方の性質を持つことは源流の理想に近い。これが、3つの源流の探究に関わる。
源流:星の上位存在
生命と無機物の両方の性質を持つ。
結晶人のような存在は源流の理想に近いようである。
それゆえか、源流の魔術師ルーサットとアズールは体から輝石が生えている。
次のテキストをみると、体から輝石が生えているどころか、体中が輝石になっているとわかる。
既に二人は半分無機物の存在であった。
アズールの腕巻き
青緑の輝石に蝕まれた腕巻き
源流の魔術師、ルーサットの装束(原文ママ)
アズールは、もはや半ば無機物であった
ルーサットの腕巻き
青い輝石に蝕まれた腕巻き
源流の魔術師、ルーサットの装束
ルーサットは、もはや半ば無機物であった
ここで、セレンの話に戻る。
セレン
輝石には、星の生命の残滓、その力が宿っているのだよ
覚えておくがいい
輝石の魔術とは、星と、その生命の探究なのだと
星の生命とは何だろうか。不可解な単語である。
輝石には、星の生命の残滓が宿っているそうだが、輝石は石であるからもちろん無機物である。星の生命が宿るとはどういう意味なのだろうか。そもそも星も無機物である。なにかの比喩なのだろうか。
ところが、我々は星の生命そのものを見た。
降る星の獣、降る星の成獣、アステールである。
どれも体が石・鉱物でできている。
ゲルミア火山の降る星の成獣、アルタス高原の降る星の獣。これらと戦う場所は明らかに隕石のクレーターである。
ボスのアステールは、腐れ湖の先とイエロ・アニスの坑道の二か所で戦える。その洞窟の天井には星空が広がっている。アステールの座す背後は、もはや星雲である。
アステールの二つ名は、片方が「暗黒の落とし子」、もう片方が「暗黒の星々」である。アステールの英語名は Astel であるが、星はギリシャ語で ἀστήρ と書き、英語に転写すると aster となる。また、星はラテン語で stella と書く。(厳密にはもっと込み入っているが省略する)
アステールも降る星の獣も、星そのものである。そして、生命でもある。
ならば、星の生命の探究は、いずれこうした存在を探究するのが必然だろう。
セレンは、源流魔術の復興のためにプレイヤーにルーサットを探すよう依頼する。
セレン
輝石魔術の源流を復興するために、必要なのだ
星の子に、もっとも近付いたその体がな…
星の子に最も近い魔術師。セレンは源流魔術の復興に必要だと言う。師範としてのルーサットではなく、肉体としてのルーサットを。
ここで、ルーサットの頭装備に注目する。
眼のようである。
アステールや降る星の成獣も、同じように巨大な眼を持つ。ルーサットと違い、瞳孔は丸い。
また、アステールと降る星の成獣の眼が埋まっている部分は、亀裂の形状が一致している。恐らく、降る星の成獣も巨大な頭蓋骨に眼がおさまっていると思われる。
そして、ルーサットも頭蓋骨の上部に眼がある。
ルーサットの輝石頭
その巨大な青輝石の頭冠
脳を頭蓋ごと置き換えたそれは
(略)
ルーサットは、脳を眼で置き換えたのだろう。これはアステールや降る星の成獣の特徴とも一致する。巨大な頭蓋骨には、脳が本来ある位置に眼がおさまっているのである。
そして、驚くことに、ルーサットは脳を置き換えても動くことができていた。
これが、セレンに星の子に最も近付いたと評した理由だと考えられる。
ルーサットは、明らかにアステールや降る星の獣といった星の生命に向かっていた。
これは、アズールについても言えることである。
彗星アズール
源流の魔術師の一人、アズールの魔術
「伝説の魔術」のひとつ
輝石の故郷とされる、遥かな星空
その奔流たる、極大の彗星を放つ
長押ししている間、それは放たれ続ける
アズールの垣間見た源流は、暗黒であった
彼はその深淵に心奪われ、また恐怖したという
暗黒はアステールを生み落とした。アステールの異名は「暗黒の落とし子」「暗黒の星々」である。アズールはその暗黒に心奪われた。
アズールとルーサット。その源流魔術の探求は、星の上位存在に向かった。
源流:魔術師球
トープス
…しかし彼女は、学院を追放されたんだ
塊の魔女、数多の魔術師を惨たらしく手にかけた疑いで
塊の魔女。セレンはそう呼ばれる。
一体何の塊なのだろうか。
魔術師塊のタリスマン
魔術師球と呼ばれる学院の悪夢
最初のそれを象ったタリスマン
魔術の威力を大きく高める
輝石魔術には、源流という禁忌がある
魔術師を集めて星の種となす
源流では、これは探求の一手段なのだ
塊とは、魔術師の塊である。
探求の手段と言われているが、セレンは他人を魔術師球にするだけでなく、自身も魔術師球になってしまう。(セレン生存ルートの場合)
最初、私はセレンが失敗したせいでこの姿になったと思っていた。
だが、恐らく失敗ではない。魔術師塊のタリスマンのテキストにあるように、これは手段にすぎず更なる続きがある。これはカーリア王家が源流を禁じた理由に繋がる。
セレンと魔術師球については次の記事で考察する。
レアルカリア学院の魔術
先述したように、レアルカリア学院はカーリア王家によって源流が禁じられた。
だが、源流の存在が色濃く残っている。
レアルカリアにいたカニや壺は生物と無機物の中間であって源流の理想に近い。
また、レアルカリア学院の生徒が輝石頭を被るのも、生物と無機物の中間を理想としていた過去の名残であろう。
トープスはテキストで鈍石と揶揄される。生物を無機物で喩える表現である。
トープスの力場(一部抜粋)
鈍石のトープスが、生涯を賭して探究した魔術
源流を禁じたカーリア王家、その頂点たる月の女王レナラさえもが、源流に近い禁術を使っている。
ミリエル
許されぬ術に耽っているのです
雫の幼生
銀の雫と呼ばれる、変態生物の核
生物と物質の中間にあるもの
満月の女王レナラが抱く、琥珀のタマゴ
その秘めたる「産まれ直し」の素材となる
産まれ直しでは
レベルアップを最初からやり直すことができる
産まれ直しに用いる雫の幼生は源流に近い特徴を持っている。
源流を禁じておきながらも源流に近いものが数多くある。
このように、レアルカリア学院は、源流を軸とするとまとまりが見えてくるのである。
恐らくセレンの言い分は正しい。
セレン
覚えておくがいい
輝石の魔術とは、星と、その生命の探究なのだと
今や、それを忘れた魔術師もどきばかりだからな
セレン
カーリアの王家を受け容れ、骨抜きとなった衒学ではなく
禁忌なき、真摯な探求としての輝石魔術を、私は望んでいるのだ
源流の探究は非常に危険なものだが、源流こそが輝石魔術の軸となるのだろう。
この考察があっていれば、なかなか絶望的な話である。
セレンの探究、源流の魔術 まとめ
- セレンは、源流の探究でレアルカリアから追放された
- カーリア王家が源流を禁じた
- 源流は正統な輝石魔術だとセレンは主張
- セレン曰く輝石魔術は輝石、星、星の生命の探究
- 生命と無機物の中間は、源流の理想に近い
- 源流の探究方法は2種類登場
- 星の上位存在へ:ルーサット&アズール
- 魔術師球へ:セレン
- レアルカリアには今でも源流の探究に由来するものが大変多い
- これゆえ、恐らくセレンの言う通り源流は正統な輝石魔術
以下、続編です
セレンの探究が行き着く先に関する考察です。
源流の探究がどこへ向かうかを更に考察しました。
これにより、カーリア王家がなぜ源流を禁じたかが明らかになります。
「セレン、衝撃の結末の理由 なぜ地下世界に星空が広がっていたのか」エルデンリング考察4 - Ashlasの考察